今日6月8日はドイツの作曲家E.シュルホフの誕生日だそうで!
昨年2022.3.25に行ったリサイタルでは彼のサクソフォンの作品「Hot-Sonate」を演奏しました。いわゆる「ジャズとクラシックの融合」的な作品だが、今日のジャズとは違う当時のジャズのイメージが感じられてそれがとても面白い。この頃20世紀前半の音楽に特に興味をひかれていて、主な選曲は1900~1930年代から行いました。
曲目解説を自分で作成すると決めて意気込んだところまでは良かったものの、演奏会が近づいてきても捗らずヒーヒー言う羽目に。。そんなところ日頃お世話になっている音楽学の先生の助け舟を得て、言い回しなど修正しまくりなんとか作成しました。本当にありがたいことでした。
以下その時のプログラムノート、チラシ。
Ervín Schulhoff (1894-1941): Hot Sonata (1930)
エルウィン・シュルホフ:ホット・ソナタ
エルウィン・シュルホフは、私たちに第一次世界大戦後のドイツの雰囲気をリアルに伝えてくれる作曲家ではないだろうか。
彼はプラハに生まれ、幼少期からピアノの英才教育を受け、マックス・レーガーに師事したことがきっかけで作曲に関心を持った。1910年代後半~1920年代のドイツは、第1次世界大戦における敗戦の影響で非常に不安定な情勢でありながら、人々の反動的なエネルギーと戦争による他国の文化の流入とが結びつき、“ワイマール文化”と語られることになる、雑多ながら非常に豊かな文化が花開いていた。
シュルホフはそのような気風の中で作曲活動を行い、戦後間もなくはそれまでの常識や社会秩序を否定する芸術運動「ダダイズム」に積極的に参加し、エロティックで通俗的なテーマを扱った作品を残した。また、ジョン・ケージの《4分33秒》以前にコンセプトは異なるが全くの無音の音楽を既に作曲していたことなど、常に好戦的だった彼の創作は近年話題になり再評価されている。
本公演で取り上げる《ホット・ソナタ》では、当時アフリカ系アメリカ人の新しいダンスミュージックであるジャズが海を越えて彼の耳に届いたことが曲想に影響している。1920年代は娯楽産業が一気に栄え、カバレット(キャバレー)で行われるアメリカ風のショーやライブにサクソフォンは強く関わっていた。ジャズの諸要素はシュルホフの創作意欲を刺激し、また既存の音楽芸術に反抗するダダイズム的表現としても扱った。このようにシュルホフはヨーロッパで最も早い段階でジャズに注目し、創作に反映させた作曲家の一人であった。
ジャズの要素をクラシックに取り入れる営みは、これ以降積極的に行われ、アメリカではいよいよサクソフォンがジャズ文化の中心に立ち、華やかな歴史を重ねていくことになる。クラシックとジャズどちらにもまたがるカメレオン的なサクソフォン文化の起源が、この作品にあると言えるのではないだろうか。